Monday, December 11, 2006

ジョン天国へ行く

今朝未明、愛川町の動物病院の居候ジョンが天に召された。成犬になってから迷い込んできたので享年不明。いやしくてすぐびびる、情けない駄犬だといわれながらも、何となく憎めない存在であった。
手術をして脾臓を摘出したのは先月の20日のことだったから、あれから3週間しかたっていない。ジョンの脾臓にはいくつもの腫瘤が存在していて、それらは病理検査で「血管肉腫」と診断された。悪性の腫瘍である。決定打となるような有効な抗がん剤はいまだ研究中のような状態で、運がよければ抗がん剤を使って1年くらい生きることもあるが、手術してもしなくても、あるいは抗がん剤を使っても使わなくても3ヶ月くらい、といわれてしまうこともある。腫瘍認定医2人を擁する動物病院の居候犬が、何もこんな悪性の腫瘍で死ななくたっていいのに、神様は本当に試練がお好きなようだ。
昨日午後、出勤していたスタッフたちは、ジョンが亡くなるときそばにいてあげていたらしい。誰もいなくなった病院で、寂しく息を引き取ったのでなくてよかった。みんなに看取られ、最期は苦しむこともなかったそうだ。その後、スタッフは夜遅いというのに、ジョンの体を洗ってきれいにしてやり、今ジョンの亡骸は第2入院室のケージの中で、白い箱に入っている。
ジョンのバカ。昨日、ペットショップでおやつバイキング、2袋分も買ってきたのに。

先週は、今年2月から大学病院に通っていたKちゃんも亡くなったとご連絡をいただいた。骨肉腫で前足を断脚したKちゃんは、3本の足で力強く歩き、お母さんと一緒に大学で抗がん剤の治療をうけていた。しかし、次第に状態が落ちてきたため、抗がん剤治療を中止したのだった。自分が初診のときから担当していた犬が、Ⅲ期がん宣告(人間でいうところの末期がんかな)になったのは初めてだったから、あれからどうしているのだろうかと、気にはなっていた。
Kちゃんは、少し前から鳴きどおしとなっており、床ずれも多くなり、最終的にお母さんは苦渋の末安楽死という道を選択された。電話口で「わたし、一番嫌だと思っていたことをしてしまいました。」と涙をこらえた声で話されていたが、安楽死は最後に残された救いの手段だ。勇気をもって決断されたお母さんを、Kちゃんは決して恨みはしない。むしろ、骨肉腫で痛む脚を切ったことで、文献では余命100日と言われている時間を2倍以上に伸ばすことができ、おいしいものを食べ、自分の足で歩き回り、何より、お母さんの愛情をたっぷりと注いでもらうことができた。Kちゃんは目元の優しげな女の子だった。きっと今頃は、大学でお友達になった子達と雲の上を走り回っているだろう。

犬の幸せって何なのかなって、いつも考える。病気になったら可哀想?死んだら可哀想?それはちょっと違う気がする。生老病死、生きるものはいつか老いたり病んだり、不意の事故で命を終えるもの。だから、病気になることとか死ぬことは、自然のことなのだ。お別れするのは悲しいことだけど。
犬が生きている間、どれだけ幸せを感じていたか、それが一番大切で、たとえ若くして天国に行ったとしても、愛情をたくさん注がれていた犬は、幸せだったと思う。
限られた彼らの時間をよりハッピーにするのが、家族の使命だと思うし、それを医療の側から支えるのが獣医師の役目だと思っている。
ハックや翔ちゃんが、家族の愛情に満足しているかどうか、それは聞いたことがないけれど、お別れのときがくるまで、変らない愛情を注いであげなくちゃね。

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