Saturday, July 23, 2005

Jasmineの闘い

先週、農林水産省に電話をかけた。動物の輸入検疫、それも猫の狂犬病予防注射に関して、いくつか質問があったからだ。
こういう場合、平日の5時までという限られた時間に電話しなければならないので、やむを得ず昼休みに職場から電話をかけることになる。以前もかけたことがあったが、「担当のものに替わります」という言葉を何度も聴いた挙句に「詳しくは検疫所のホームーページに書いてあります。」と言われてしまった。ホームページを見て疑問に思ったから問い合わせていると言っているのに、これではお話にならない。とても大人の会話ではなく、貴重な休み時間を10分近く無駄にした気分になったものだった。
また同じことになるのかなー、不安にかられながらダイアルしてみる。「農林水産省です」という第一声は相変わらず機械的な女性の声だが、検疫について伺いたい、と告げると「少々お待ちください」とさっさと保留にされる。
最初につながったのは「衛生管理課」というところの女性で、輸入検疫の猫の狂犬病の件で、と告げると、「あ、では担当のものに替わります。」といって今度は男性に替わった。それでまた最初から自分の名前と都内の勤務獣医師だと告げてから、本題に入る、とまた同じように、「えー、それは、その、担当のものに替わりますので少々お待ちください。」と言って保留になった。ちょっと待っていたら、「プー、プー、プー」と切れてしまったではないか。あれ、切れちゃったよ、ともう一度かけなおすと、また同じやり取りを数回した後、また切れてしまった。もー、こっちがキレたいよ、ほんとに。
結局、最終的につながった先は「衛生管理課」で、それでもこちらが聞きたいところについて、「そう決まっている。」の一点張り。こちらが聞きたいのは、検疫制度の中身ではなくて、それを決定した理論や科学的な根拠についてなのだ。決まっていますから、と言われて、ああそうですか、と食い下がるくらいなら、わざわざ電話なんかしない。あのまことしやかな検疫制度の一般論なんか、百も承知だ。私が知りたいのは、いかにも真実のような一般論的なあの検疫制度の、例外のような事例はどうなるのか、とかどういう根拠でああいう内容になったのか、ということなのだ。半分切れ掛かって「こちらも獣医師ですから、それくらいはもちろん熟知していますけど。」とつい言ってしまうくらい、誰を相手に話をしているつもりなのか、本当に話にならない。結局、こちらもめんどくさくなって、検疫制度の根拠になっている文献とか資料があれば教えてください、と言ったらファックスで送りますと言う。もー、話しているのも時間の無駄だとファックス番号を教えたら、30分位してから本当に送られてきた。それも、A4サイズで16枚!!一般企業だったら、こんな大量のファックスを流すよりも、PDFファイルとかで送ったほうが経費削減じゃないのか?さすがお役所、親方日の丸。いちいちやることが、納税者の神経を逆撫でしてくれる。おまけに、もうひとつの疑問点はなんだかうやむやにされてしまった。なんだよ、農林水産省。
もっとも、実は検疫所には大学の同級生もいたりするし、同じような獣医大学出身者も少なくないから、本来なら仲間みたいなものなはずなのだが、どうも世界が違うらしい。

今回は猫の狂犬病予防注射についての問い合わせだったのだが、ひとつものすごく問題なことがわかった。猫は狂犬病、白血病、そして一般的な3種混合ワクチンの接種によって、悪性の線維肉腫という腫瘍ができることがある。ワクチンを接種した部位にできるそいつは、通常の線維肉腫よりもさらに悪性で再発しやすく、臨床獣医師を悩ませる問題のひとつなのだが、もし、飼っている猫が狂犬病ワクチンで線維肉腫ができたしまったとしても、日本に入国するためにはワクチンを打たなくてはいけない。法律上はそうなっているのだが、すでに自分の猫に悪性の腫瘍ができているというのに、ワクチンをうてる飼い主はいるのだろうか。一緒に帰国するために腫瘍ができる可能性がものすごく高くても、やっぱりワクチンをうって日本に帰るのだろうか。腫瘍ができたからといって、狂犬病ワクチンをうたなくてもいいということにはならないのだそうだ。腫瘍ができようが、アレルギーが出ようが、日本に入るなら注射をうてよ、というのが狂犬病予防に関する新しい検疫制度。線維肉腫ができたら、ひどい場合は断脚しないといけないんだよ?アレルギーで死んじゃうかもしれないじゃん。そんなの、中和抗体が十分だったらなんとかなるんじゃないのか?そのための抗体価測定でしょ?いまいち、納得がいかないような気がしないでもないが、農林水産省の国際衛生管理課は私に謎を残してくれたのだった。Jasmineの闘いはto be continued.新たな矛盾点、疑問点の追及はまた来週、ということで。
ずさんな法の裏をかいて猫を守るのだ、にゃー。

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