Tuesday, February 22, 2005

再会

なかなか風邪が治りきらず、匂いがあまりよくわからない。何を食べても味が半分くらいしかわからない。そのうえ、四六時中鼻をかんでいるので鼻の下ががさがさだ。
しかし、体調は悪くなく、熱がないだけでこんなに体が楽なんだと改めて思う。で、今日は大田区、外来件数は少なかったけれど、私が担当していた高齢の猫の検査とヨークシャーテリアの心臓の検査が入っていた。
高齢の猫は女の子だけどショウタちゃん、今まで外科手術を許されていなかったこの分院で乳腺腫瘍の手術をした猫だ。(本院の院長が「じゃー、日比先生にお任せします」と言った)日頃手術慣れしていないスタッフを率いての手術というのは、いろんな意味で大変だ。そんな中、麻酔だけはもう一人の先生にまったくお任せで大丈夫、というのは心強かった。その後、出産を控えた飼い主さんは、ショウタちゃんに抗がん剤を使わず様子を見る、出産のときは一緒に神戸に連れて帰る、ということになっていた。
3ヶ月ぶりの再会であるがショウタちゃんは体重が2/3まで減ってしまい、まるで別の猫である。神戸で腎不全と糖尿病になり、すっかり変わり果ててしまった。私が最後にあった11月は血液検査上問題は全くなかったので、激動の3ヶ月間だったようだ。今後はこちらで治療を続けていくので、腎不全や糖尿病の状態と、乳腺腫瘍の進行度合いをチェックする。実は乳腺腫瘍も手術をしたところと反対側の乳腺に再発がある。猫の乳腺腫瘍のおよそ8割は悪性であり、ショウタちゃんも病理検査で悪性の乳腺ガンということはわかっていた。幸い肺転移はおこしていない。
今後は糖尿病の治療をしながら腎臓がこれ以上傷まないように気を使っていかなければならない。乳腺腫瘍のほうは、治療をしたいのはやまやまだが、今の状態では麻酔をかけることも抗がん剤を使うこともできない。ショウタちゃんの飼い主さんは、それでもできるだけのことをしてあげたいと、自宅での皮下点滴をすることにした。赤ちゃんのいる家庭なので頻繁な通院は難しい。
動物の治療をしていくうえで難しいのは、動物が口を利かない、なんてことではない。そんなことは獣医になる前からわかりきっていたことだ。難しいのは、人間のようにすべての病気を同じように治療していけないこと。飼い主の状況や気持ちひとつで、その動物の治療が決まってしまうのだ。人間の治療のように命最優先とはいかないことも、よくある。歯がゆい思いを抱えながら、できるだけベストを尽くす、それが私の毎日だ。だから、飼い主さんができるだけのことをしたい、と言ってくれるならば、こちらもできるだけの工夫をしていきたい。

昨日、助手に「北海道はいくらがおいしいんだって。ママ一生懸命お仕事して、北海道に連れて行ってあげるからお腹いっぱいいくら丼食べよう。」って言ったら、「それよりも病院先に作って。まず病院だから。」と言われてしまった。ママが病院を作ったら犬を飼っていいよ、って私が言ったことをずっと覚えていて、どんな犬を飼うか、時々考えて楽しんでいる。いくら丼より、病院が先かあ。全然ケタが違うんですけど・・・・。

1 Comments:

At 1:29 pm, Anonymous 渡辺俊子 said...

個人的なお話で申し訳ありません。
我が家のバセットハウンド(6才10ヶ月)が舌に7cmx1.5cmの赤い腫れが見つかり、検査の結果、形質細胞腫と判断されました。舌の腫瘍の手術は難しいのでかかりつけの病院ではできないといわれました。麻布獣医科を紹介できるけれど、手術まで2ヶ月かかるか3ヶ月かかるか分からないそうです。
そのような折にこちらのブログで形質細胞腫の手術のことを読み、コメントいたしました。
私どもは福島県棚倉町在住の老人二人なので、相模原の病院まで通うのはかなり難しい状態です。
もし先生が東北で手術可能な病院をご存知でしたら教えていただけないでしょうか?
かかりつけの先生にお話して紹介状を書いていただこうと思っております。
お忙しいところ勝手なお願いで申し訳ありません。

 

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