Monday, July 25, 2005

1週間の始まりに

先月、大学の腫瘍科に雑誌の取材が来て、午前中いっぱい慌しい診療風景をカメラに収めていったということがあったのだが、本屋さんでその雑誌を見つけて思わず買ってしまった。「DogFan」という雑誌で、「ペットのお仕事最新情報」という特集を組んでいて、そこで獣医大学が出てくるわけだ。ドッグワールドかと思っていたらドッグファンの間違いでした。ムーさん、ごめんなさい。
実際の男女比よりも女性獣医師のカットが多いような気がするのは気のせい?私もしっかり写っています。6月にできたばかりのオーダーメイドのワイシャツと、ジムトンプソンのネクタイ締めて、そしてショートヘアで。ああ、ほんとにヘンな頭だ。あの撮影の後、多少整える程度にカットしてもらったら、前髪を薄くされすぎて、杉田かおるとかぶるような気がしてイヤなのだ。最近は少し伸びて「女子アナ風」と言われることもある。取材といってもインタビューはうちの助教授と学生だけ。現役研修医は写真のみだ。気になる方は本屋さんで見てください。ドッグファンです。

今日もテリー君はしっぽを振りながら病院に入ってきて、待合室で「ヒューン、ヒューン」と甘えた声を出しながら私を呼んでいる。ほんと、私を呼んでいるのだ。そして、受付の奥に私を見つけると、吠えて呼び始める。ちょっとだけよだれを垂らしているのは、毎回のごほうび作戦の賜物である。そして、診察室に呼ばれるのを今か今かと待っている。そんなふうに呼ばれるのを待っている犬は、テリー君だけだよ。^^;
テリー君は抗がん剤の治療を一切やめている。だらだらと使い続けることで、薬が効かなくなることがあるからだ。そして、リンパ腫では一度症状が消えた後に再び症状が出ることを「再燃」と呼ぶが、そのときに、もう一度抗がん剤を始めるのだ。治療開始から1年を経過し、テリー君は体重が6kgも増えてしまった。リンパ腫の治療をしていた犬にはとても見えない。ここまで経過は順調であったが、毎週の通院に加えて経済的な負担も大きく、それでも治療を続けてくれた飼い主さんには頭が下がる思いだ。せめて、テリー君の病院嫌いがなくなれば通院の苦痛も減るかと、ごほうびをあげ始めたのだが、思った以上に効果があり、ビデオにとってネットで公開したいくらい、テリー君は診察台のうえでいいこである。ハックは診察台で足がすくんで立つことができないので(情けない)、ちょっと見習わせたいところだ。テリー君にとって、この楽しい時間が、できるだけ長く、1日でも長くなるように、できるだけの治療をしたいま、あとは、本気で祈る私である。

テリー君との楽しいひとときに浸っていたい私であったが、先週から大田区の病院のほうのショウちゃんの調子が悪く、休みだった昨日と愛川町で仕事をしている今日、携帯電話、携帯メールにくわえて職場への電話を駆使して、状況を逐一報告してもらったり指示を出したり、頭の休まるヒマがない。いっそのこと出勤したいくらいなのだが、そこまでするのは出勤している獣医師に対してなんだか失礼なような気もするので、自粛している。でも、結局いちいち指示を出すので現場にいたほうが便利だ。ジレンマなり。
診療時間の終わり際に、病院に電話をかけたら動物看護士の女の子が、オーナーがどんなふうに考えているのかなんと言っていたのかを報告してくれた。「最後は日比先生にみてもらいたい」と、そう話しているそうだ。多分、明日は時間をかけてショウちゃんの飼い主さんと話をするだろう。最後の時間を迎えつつあるショウちゃんのために、私は真正面からオーナーさんと向き合って、一緒にショウちゃんの最後の時間を受け止めなくてはならない。そして私は、同時にショウちゃんの飼い主さんの深い深い哀しみとも向き合わなくてはならない。それがホームドクターの務めだ。それを思いながら、今夜は眠ることにする。動物が好きだから、それだけではできない、それが獣医師なのだ。

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