Tuesday, August 23, 2005

リンパ腫再燃

テリー君のリンパ腫が再燃した。再燃、というのは抗がん剤で姿を潜めていたリンパ腫がまたどこかに現れること、と思っていただいて大体合っている。つまり、一般的に再発、とか言われていることがリンパ腫では再燃というのだ。
昨年、治療を開始したときはすでに体の表面から触れるリンパ節がすべて大きくなっている状態で、食欲も元気もちょっと落ちているという状態だった。それが抗がん治療によく反応して、現在は体重は逆に増え元気も大変よろしい。
この再燃の日に備えて、抗がん剤はある時点から中止している。それでもテリー君はとても調子がよかったし病院に来ると私の姿を見るやヒューンヒューンと耳を伏せてしっぽをブンブンと振って楽しそうだった。あまりにも調子がよいので、私はこのまま再燃などなく過ごせたらいいな、と思っていた。でも、リンパ腫からは逃げられない。そして、再燃した場合、抗がん剤が効いている時間が前回の抗がん治療のときよりも短くなる、といわれている。
テリー君の右ひざの後ろにあるリンパ節を触って、念のためといって注射針を刺して細胞を採り、染色液に浸して顕微鏡で見る。標本には脂肪と思われる脂っぽいあとがついたから、単なる脂肪だったらいいなと思いながら顕微鏡をのぞく。それは自分自身の中で「リンパ腫再燃」ということをどうにかして打ち消したい、儚い抵抗でしかないこともわかっている。うずらの卵よりも一回り大きいリンパ節から細胞を採ってくることを失敗するような私ではない、ということは目の前のレンズの下の細胞がリンパ腫だろうということは、ほぼ間違いないのだろう。それでも、私は自分で確定するのを避けてしまう。
通常の検査同様、取れた細胞を標本にして、検査ラボに送ることにする。その検査ラボで細胞を診断しているのは大学時代の同級生で、今では日本でも有数の細胞診断医として名が知れ渡っている。彼の診断なら間違いないと、日本で唯一の米国腫瘍内科医も言うくらいだ。彼を名指しで標本を送ると、お友達特典とでも呼ぼうか、普通に診断結果が送られてくるよりも2日ほど早く、メールで知らせてくれるのだ。もちろん、追加料金はない。(たまに鰻でもおごれと言われるが)
とうとう再燃してしまった。ショックでためいきばかりが出る。昨夜のうちに、その診断医にメールを送って標本を送ったことを連絡した。「多分リンパ腫の再燃だと思うけど」と書いたら、まだ見てもいないのに「再燃や」と返事をよこす。なんでわかるのかと返したら「見なくてもわかる」とか言う。おいおい、新手の心霊療法か?私が可愛がっている犬だからショックだと書いたら「リンパ腫の細胞もその犬の一部だから同じように可愛がってやらんと」と書く。えー、リンパ腫のせいで命が縮むのに?「リンパ腫の細胞も可愛がってやればいうことをきく」・・・・本当か?
本当かどうかは、わからないけれど、確かに、周りの人間がネガティブな気持ちで接していたらそれは犬にも伝染して、決してよい方向にはならないだろう。そして、おととい学会で聴いたリンパ腫のレクチャーで「B細胞性リンパ腫の場合、まず1年の生存を目標にする。1年が経過したら、今度は2年を目標に頑張る」と大学時代の恩師が話していた。そうだ、だめでもともと、再燃は想定内の出来事に過ぎない。
2週間ごとだった診察がまた毎週になるだろう。飼い主さんはちょっと大変かもしれないけれど、テリー君は私に会いに来る。私はテリー君が元気に会いに来てくれる日が1日でも長くなるように、頭ひねって頑張ろう。リンパ腫と闘うのではなく、リンパ腫と共存して生きるのだ。

0 Comments:

Post a Comment

<< Home