Monday, August 14, 2006

診なきゃわかんないです

大学にいるとき以外は、2つの動物病院で仕事をしている。愛川町には大学の腫瘍科のキムがいるし私の出勤は月曜日だけだから、最近の抗がん治療の件数はそれほどないけれど、大田区のほうではコンスタントに腫瘍症例が発生し、なぜか大学まで連れていかなければならないような、症例がちょっと多い。私の知識や技術だけではたちうちできず、日本の獣医療施設としてはまだ3台しか導入されていない高出力の放射線治療が最後の切り札になるのだ。おっと、私の力が未熟なせいだけではないことは、付け加えておこう。鼻の中とか脳の中の腫瘍や抗がん剤に反応が悪い腫瘍に、放射線が効果的なこともあるのだ。
先週末、大田区の動物病院の本院に呼ばれて診察・治療に行った。リンパ腫の治療を1年3ヶ月しているチワワの今後について「お知恵を拝借」したいらしい。(・・・・さんざんいじくってから呼ぶの?^^; )
今までやってきている治療や検査に不備があった場合、それをどうやって飼い主さんに説明するのかとか、めんどくさいことがあるから、途中から登場するのは好きではない。途中で登場して飼い主さんとお話して、治療を始めても、そのあとを自分で見ることができないのはもっと困る。名前と抗がん剤の使い方だけを残して、あとは知らん振りというのはまずいのだ。薬というのは使えばよいというものではない。それが効果を挙げているのか無効なのか、むしろ毒になっていないか、その判断をするのが担当医の役割なのだから、私の名前を出した以上は私に報告をしてもらう必要があるし、必要に応じて私が診察に行かなければならないだろう。プロトコールだけ聞き出しておいてあとは勝手にやります、というようなことをされたら、二度とは私の貧弱な知恵を頼りにされるな、と思っている。仮にも腫瘍認定医の私は、ただの情報源ではないのだ。自身が考える情報源なのであって、ただの知恵袋ではない。この歯がゆい気持ちが誰かにわかってもらえるだろうか。

病気の相談というのは、難しい。電話やメールでは実際の症状や状態や程度が正確に伝わってこないので、いろんな見極めができないのだ。
「診せて頂かないとそれ以上のことはお話できません。」というのは何も料金のためだけではない。診察とは5感を使ってするもの、だからただ話をきいただけでは診断などできはしない。
チワワはこれからどうなるのだろう。話を聞くだけのアドバイザーなんてかっこいいことは、私にはできそうもない。診なきゃわかんないよ、でしょ?

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