Tuesday, March 15, 2005

フル回転な週末

先週末はハードだった。糖尿病治療をしていた猫のめじろちゃんが、糖尿病性ケトアシドーシスという緊急状態に陥り、体温が29.9℃、意識はなく著しい脱水状態で、金曜日の朝来院した。悪いことにおしっこも作られていない。これは命にかかわる状態だ。すぐに点滴を始め、体をドライヤーやヒーターを使って暖め、短時間作用型のインスリンを注射する。その後は1時間ごとに血糖値や尿検査の結果を見ながらインスリンの量やうつ時間を決めたり、点滴の速度を変えたり、点滴の中身を替えたり、1時間ごとに頭をフル回転させなければいけない。初日はどうにか腎臓が少量のおしっこを作り出せるまでに持ち直し、体温も低めだが36度台まであがってきた。本来ならばそのまま入院で24時間看護が必要なのだが、大田区は分院でありクリニックとしてしか機能していない。そこで横浜にある夜間専門の動物病院に行ってもらうことになった。夜を越えたら、なんとか頑張れるかもしれない。そう期待していたら翌朝、前日よりはましな状態で来院した。またそのまま預かって血液検査、点滴、インスリンをうちながら様子をみていく。土曜日は前日よりはめじろちゃんの状態もよく、午後には呼びかけに反応して尻尾をゆらしたり、声にならない声で「にゃーん」と、答えたりもした。おしっこも順調に出ている。あと少し、頑張れば自宅治療になれるかもしれない。・・・と思っていたら、いつもめじろちゃんを連れてくる飼い主さんの実家のお父さんと思しき人物が、お迎えに来るなり開口一番こう言った「金がもたないよ。無理。」
一般的に考えても大変失礼な言い方だと思うが、確かに一晩に5万も6万もかかっていたら、今まで病気知らずのめじろちゃんの家庭にとっては大きな痛手だろう。でも、あとちょっとなんだ。
結局、私とお父さん?との話し合いは平行線で、何を言っても「金がかかる。」「治るのか」の繰り返し。糖尿病は一部の例外を除いて完治する病気ではないし、ちゃんと治療しようと思えばお金もかかる。だから、飼い主が後悔しないような選択をしていかなければならない。人間と違って、治療のイニシアチブは医者よりも家族側にある。最終的な判断は飼い主の一存なのだ。
それでも、私たち獣医師は力を尽くしている。少なくとも、めじろちゃんが運び込まれた初日の私は、1時間おきと言わず1日中頭の中で、血糖値の推移のシュミレーションと、点滴剤の選択やインスリンの計算をずっとしていた。そんなときでも、ほかにも診察しなければいけない。頭フル回転。
そして、日曜日。この日は私の週1日しかない休みだが、午後から品川でセミナーが入っていた。でも気になるので朝から蒲田でうろうろしながら病院からの電話を待っていた。もしかしたら、もう病院には来ないのかもしれない。でも、もしかしたら来るかもしれない。
蒲田のユザワヤの文具売り場にいるときに病院からの電話が鳴った。若い先生からの電話だった。とりあえずの指示を出し、東急線多摩川線に乗り込む。たった2駅だが、長く感じた。駅から病院まではそう遠くない。小走りで病院の裏口まで行き、ドアの鍵を開けてもらう。めじろちゃんは、昨日よりもちょっと悪くなっている。インスリンの効果が出にくい、というかインスリンに対する反応がまちまちで、コントロールが難しい。ひょっとしたらほかの病気も併発しているケースかもしれない。その検査は昨日ラボにオーダー済みだ。
結局めじろちゃんの飼い主さんは、今度の週末にお休みが取れるのでそれまで1日中預かってくれるところでみてほしい、休みに入ったらこちらの病院に戻りたい、ということだった。1日中見てくれるところで、信頼できて、また後からこちらに返してくれそうなところは・・・・駅の向こうの開業したばかりの後輩の病院だ。しかし、病気が病気だけに獣医師一人でやっているところに夜中も監視が必要な猫を送り込むというのは、考えようによっては身勝手なお願いだ。電話をかけ、事情を説明し、無理なら断っても構わない、と言ったが彼は快く引き受けてくれた。ありがたい。彼なら安心だ。
そして、今日の夕方彼からメールが入っていた。めじろちゃんは、だいぶ改善の方向にあるようで、ひょっとしてひょっとしたら、私が次に会う金曜日までに、自分からごはんを食べられるようになるかもしれない。ヤマちゃん、ありがとう!本当は人にお願いするよりも、自分でずっとみていてあげたかった。雇われ獣医師にはそのへんに限界がある。勝手に夜間診療なんかしてはいけない。初日だけ、夜間病院が開くまで、本院に内緒で9時までみていた。それくらいしか、してあげられなくて、悔しかった。 めじろちゃん、あえるのを楽しみにしてるよ。

で、安心したら自分の目の痒いのと鼻がぐずぐず、くしゃみが出るのが気になってきた。でも、病院に行く暇はないので、市販の飲み薬と目薬を試してみたら、これが効果テキメン!ということで、アレルギーらしい。診断がつかないけど疑わしい病気に対して治療を行い、その反応によって診断を下すことを「診断的治療」という。それにしても鼻水の出ないのがこんなに楽だなんて、薬ってすごい。これで、バイクの運転中にくしゃみで目をつぶることもなくなり、安全かも。

あー、疲れた。お風呂入って、寝よう。明日は本年度最後の大学腫瘍科の手術日だ。

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