Monday, January 30, 2006

腫瘍医の猫に腫瘍

夕方、実家の翔ちゃんが来た。正確には母が翔ちゃんを病院まで連れてきた。今朝、翔ちゃんのおなかに何かしこりがあるというから、そんなもの早く調べないと悪性だったらどうするのさ、と言っておいたら仕事を早退して連れてきた。
さっそく注射の針をちくちくとさして、取れた細胞を染色して見たら、顕微鏡のレンズの下には紫色の世界が広がっていた。細胞にたくさんの紫色の顆粒をためこんでいる、丸い細胞が大量に見える。
「肥満細胞腫」というのがその腫瘍の名前で、そのタイプによって今後の経過がよいものと悪いものがあるのだけれど、翔ちゃんのは比較的よいほうだったので、母が心配で眠れなくならない程度に説明をしておいた。確かに、この腫瘍ですぐに死ぬとはいいがたいが、油断は禁物だ。腫瘍のもつ物質で死んでしまうことかないとはいえない。でも、今年17歳になるのだから、ひょっとしたら天寿を全うするまで腫瘍の影響が出ないこともありうるけど。
獣医で言われることのひとつに「獣医の飼っている動物は、興味をもって勉強している分野の病気になる。」というのがある。だいすけや宙太が死んだのは私がずっとチカラを注いでいた内科、腎臓だ。
蛇の道は蛇、ということで、しっかり治療させてもらいます。なんか、ため息出るなあ。

リベンジなるか

土日は第23回日本獣医がん研究会の冬の大会が麻布大学で開催された。やっていることは腫瘍に関することだけなのに、参加人数は500名に達し、昨年の410名を大きく越えた。年々腫瘍に対する関心が高まっていることをひしひしと感じる。土曜日は教育講演といって、腫瘍治療に必要な8科目の講習会のようなものも行われ、こちらも老若問わず多数の参加者で会場はいっぱいであった。診断学総論、画像診断学、臨床病理学、細胞診、治療学総論、腫瘍外科学、化学療法、放射線治療の8科目の講習をすべて受けなければ、腫瘍認定医試験を受けることができない。逆にいえば、この講習さえ受ければ腫瘍認定医への道が開けるとあって、多くの獣医師が集まってくる。もちろん、講習を受けただけで簡単に試験に合格するわけではない。なにしろ、昨年は私を含め、一般の先生方より濃厚な環境にいる3名が不合格をくらっている。ちょっとやそっと、8科目をかじっただけでは通る代物ではない。
私は昨年落ちた。試験の最中から頭が真っ白になるほど、そして試験終了直後はなんとか合格になる材料を自分で探して、「きっと大丈夫」と祈っていたが、内部情報?によるとボーダーラインに一番近いところで落ちていたらしい。80問のマークシート問題と8題の記述問題。時間も知識も足りなかった。
今年の問題は昨年ほど難しい、という感じがしなかった。終わった瞬間、同期のキムに「去年より全然簡単だった」と言ってしまいおそらく周囲のひんしゅくをかったに違いない。記述問題も書けるだけ書いた。ちょっとあやしいと思われることも一応書いた。とにかく時間がある限り、書き綴った。ひょっとしたら、この一行で合否が分かれるかもしれないのだ。
今年の試験の合否結果は3月20日、JVCS(日本獣医がん研究会)のホームページ上で合格者の受験番号が発表されることになっている。06-011が私の受験番号。でも昨年同様、やっぱりどこかからか合否が聞こえてくるはずだ。落ちてももう髪は切らないよ。合格したらカニ解禁ということもない。でも、合格したら1年後の1種 認定医試験を受けるのは確定。
それにしても疲れた。でもさっぱりした気分。次のこと、考えなくちゃね。

Sunday, January 22, 2006

鬼のかく乱

朝からだるくてなかなかベッドから起きられず、集中力が全くない。熱はないけど気力もない。鬼の撹乱、風邪を引いたらしい。水曜はハチくんの大学での手術が入っているし、週末は大学でがん研究会が開催されるし、ちょうど1週間後は試験だ。早く治さなければと思いつつ、治す時間のある時期に風邪を引く自分に、まだ運があるのかもと思う。

Sunday, January 15, 2006

オッパって・・・

TBSのドラマ「輪舞曲」を見た。好きな韓国人俳優が出ているから。(イケメンではない)
あらすじとか設定とかは所詮ドラマなのでどうでもいいのだが、男が男を「オッパ」と呼ぶのはあまりにもいただけない。「オッパ」というのは女の子が親しい年上の男性に対して使う「お兄ちゃん」みたいな言葉であって、男が呼びかけるときは「ヒョン」つまり「兄貴」なのだ。だから男が「オッパ」と言うとオカマ言葉のようなものになるはずだ。
ドラマを見た人にしかわからない、多分見た人の中でも気にしないことなのだけど、見ていてすごく違和感があった。来週も同じか?気持ち悪いぞ。

Saturday, January 14, 2006

科学のチカラ

今日は午後から雨、レントゲン室にこもって試験勉強していてMRIの原理に思わず感動。
体内に無数にある水素原子の核内の陽子を検出だなんて、なんてドラマチックでファンタスティック!いやいや感動している場合じゃなくて、勉強しなくちゃ。

今日のお気に入り:無印良品のリップバーム、ローズの香り。
薔薇の花は好きじゃないけど匂いは好き。実家の周りにある園芸農家で薔薇の花が安く売られているので、田舎と故郷の香りがするから。
バンコクでも50本の花束で売ってたけど、信じられないくらい安くて時々「薔薇風呂」にして助手が喜んでいたのを思い出す。薔薇にロマンスは感じられない。

だから、そんなのいいから勉強しなくちゃ。あと2週間。

Monday, January 09, 2006

今年も変わらず・・

新年最初のブログの書き込みをと思いつつ、なんだかんだと忙しい年明けであった。正月気分も抜けたかと思えば、年末大学で放射線治療を受けた犬が急変し必死の蘇生処置にも関わらず天国に旅立って行ったり、11月に「幸せをありがとう」というプレートをのっけたバースデーケーキをいただいたハチちゃんの上顎、一番大きな奥歯の上に腫瘍が見つかったり、心臓の縮むことが絶えない。
ただ動物が好きだというだけで獣医ができるほど、この仕事は平和ではない。どんな動物でもいつかは別れの時が来るし、その場面に立ち会ったりすることも、あるいはお別れの時が近いことを告げたりすることも私たちの仕事というか、役割であるから、飼い主と悲しみを共にすることも、あるいは誰も知らないところで心に深い傷を負っていたりする。にこやかに応対をしつつも、必死に続けた心臓マッサージの感触が手に残っている。ハチちゃんの腫瘍を治療しなければどうなるか、それを思うと胸が痛い。愛する家族を失った人々の心中を思えば、悲しみやつらさが増幅する。仕事を続ければ続けるほど、お別れをした動物たちの数が増えていくというのも、見ようによっては皮肉なものかもしれない。
でも、それでも獣医師であり続けたいと思うのは、死という別れの悲しみにもまさるものを生きている動物たちがもたらしてくれると思うから。その命のある間、どれだけの喜びとか癒しとか、言葉にできないものをたくさん動物がくれるだろう。そのかけがえのない存在である動物が健康でなければ、幸せも半分だ。動物が健康で幸せであることと同じくらい、動物と暮らしている人間が幸せでいられること。そのために私は獣医師であり続けたい。動物が好きであるのと同じくらい、一緒に暮らしている人間が好きだと思う。
お別れの数が増えても、それ以上に、幸せだった時間も増えるはず。今年もみんな、よい1年を過ごせますように。天国のみんなが、笑顔で見守ってくれているからね。

昨日、名刺を作りに行った。あちこちに行っている私には名刺がなかったが、これから開業しようという人間があちこちで名前を記憶してもらうのに、名刺は必要だ。逆に名刺の一枚もなければ、相手にもされない。今年の第一歩。自分の名刺を作る。

今日の愛川町は晴れ。新成人おめでとう。何がめでたいかはわからないけど。20歳の頃より、ずっとずっといい時間。あと10年もしたら、助手が私の振袖を着るのかな。新しいのが欲しいのかな。