Sunday, October 29, 2006

ご恩返し

休日だった日曜日、以前の職場である横須賀の病院の分院へとバイクで向かった。前夜からの雨も上がり、澄んだ空と乾いた空気は絶好のツーリング日和である。東名・保土ヶ谷バイパスから横浜横須賀道路へ。昼前の道路は車は多いが流れは順調、のんびり走ろうものなら後ろからあおられてむしろ危険。
横須賀に出向いたのは、現在大学の腫瘍科に通院しているメイちゃんの今後の治療について、どうしても次回の診察日前に話しておきたかったからだ。詳細についてはふせるけれど、休日返上で行くくらいなのだから、決してのんびり構えていられる状況ではないことはわかってしまうだろうか。
桜ヶ丘の分院に行くのは、果たして何年ぶりだろう。横須賀市内の光景はどこかが変っているのだが、どこがどう変ったかを思い出せないくらい久しぶりだ。横須賀警察署の手前から海岸通りへと入り、新しく作られた町並みを抜けて行くと、馬堀海岸沿いのまっすぐな道に出る。このまままっすぐ行くと観音崎の灯台まで行ける。東京湾には猿島(日本軍の要塞だった無人島)が浮かんでいる。横須賀は好きな街だ。街も楽しいところだけれど、職場が楽しかったせいだろうか、そこにいて呼吸をするだけでリラックスできる。獣医師としての私の故郷といっても過言ではない、と思っている。
小一時間ほどで話は終わり、桜ヶ丘の分院を出て横須賀中央の本院に顔を出した。近くまで来て挨拶もなしに帰ることはできない。まだまだ青かった時代も、妊娠中も、そしてママになってからも、この病院あってこそ獣医師を続けてこられたし、そのために無理を強いられることもなかった。院長先生をはじめ、スタッフがみな助け合い努力をしている、気持ちのよい病院である。
その病院がどんな病院かというのは、そこにいるスタッフがどれだけ長く勤めているか、というのも実は大切なことだ。1年や2年でスタッフがどんどん変っていくような病院というのは、特殊な勤務形態や雇用形態をとっていないかぎり、おかしい。そんなにどんどん寿退社するわけでもないし、そんなに次々開業のために辞めていくこともない。この病院は、長く勤めているスタッフが何人もいる。久しぶりに顔を出してもいつも誰か知っている顔がこころよく出迎えてくれる。院長はスタッフを大事にしているし、スタッフはやりがいをもって仕事をしている。
院長先生と話しているうちに、今度その病院でプチセミナーを開くことになった。講師は私だけど、まだまだ勉強中(一生勉強中)の身なので、教科書には書いていない、大学で学んだことをテーマにしようと思う。講師料は、と聞かれたので、みなさんと一緒のお弁当だけと答えた。とんでもない、講師料をいただくほどの講師でもなし、むしろ今までのご恩返しとしたいところ。私がお役に立てることを、私はうれしいと思う。
ちなみにこの病院では月1回のスタッフ合同ミーティングをするときや夜に院内セミナーを開くときには、ちゃんと食事を用意してくれる。スタッフが困ったときには院長も相談に乗ってくれる。こんな院長の心意気を私は尊敬している。いつか自分が開業したときにも、やる気のある女性獣医師が仕事を続けていくお手伝いができるように。そして、私が仕事を続けていくことは、横須賀への恩返しだと思っている。

Wednesday, October 25, 2006

ただいま

アメリカから帰ってきた。やっぱり日本はいいな。ご飯がおいしいって、あまりにも普通なことだけど、アメリカでのつけあわせのライスはタイ米以下の扱いだ。
出発から珍道中の匂いはしていたけど、今回レンタカーで移動しなければならなかったのが最も大変であった。つけててよかったナビゲーションシステム、その名も「Never Lost」。それでも何度か道を間違えた。だって、日本のカーナビみたいに画面大きくないし、おおざっぱな表示だから5車線もあるところのどこを走ればよいのか見当つかないし、最後の朝、空港に戻るときにも途中間違えてナビに誘導されてハイウェイに戻った。この29ドルは決して高くは無かったぞ。標識の違いはそんなにないけれど、信号の解釈がちょっと違ったり踏切では一時停止しないなど、一歩間違えば事故になりかねないところが結構あり、留学経験のある先生を隣に乗せたときは「教習車みたいにブレーキがほしい」と言われてしまった。代わりに運転してもらうことは、レンタカーの保険上無理だったので仕方ない。お命預かってました。
学会の開かれたキャラウェイガーデンズはとてもとても広い敷地にロッジやヴィラなどがあり、ゴルフ場やらトレッキングルートやらがあったり、とにかく広くて敷地内の移動にも車が必要であった。私たちが止まったコテージは、それはそれはとても素敵なリビングルームと、2ベッドルームそれぞれにバスルームがついてて、たった1泊しかしないのがもったいないくらい。キッチンの作りがフィリピンやタイを思い出させるなあ。でも、ずっとずっとアメリカンリゾート?でした。もう一度行きたい。できれば1週間くらい、家族とのんびりしに。
3泊5日、とにかく移動ばかりしていた気がする。アトランタ市内に戻ったのが日曜日だったので、めぼしいショッピングモールは休み、時間も少なかったのでCNNもワールドオブコカコーラもいけず。もちろん、風とともに去りぬ関連の記念館なんかも行かれず。これじゃあアトランタに行った気がしないのは言うまでもなし。
今回の学会では、日本からの発表者も数人いたのだが、驚いたことに東大の学生さんたちが英語で発表をしていた。えらいなあ。大学生のとき、海外の学会はおろか、海外に出ることすら考えなかった私とは大違いだ。それと、東大の助手の先生が、ミニチュアダックスのリンパ腫について発表をした。ミニチュアダクスでは比較的若い年齢で消化管にリンパ腫が発生し、手術をしたあとの経過がほかの犬種と比べて圧倒的によい。それも、どうやら日本でだけ特にそれらが多く見られている。このような発表がされたのは大変意義のあることだと思う。そしてまた、数多くの症例を見ている私たちA大学からも、ぜひ発表をしていきたいものだと思う。人前で発表するには英語力がまだまだ足りないから、まずは専門誌に論文を寄せるところからスタートかな?
学会とはあまり関係ないけど、今回のご機嫌ポイント、その1)デトロイトでの入国審査で係官に「英語が上手だけどどこで習ったの?」と聞かれたこと。質問されたことはごくありきたりのことだと思うのだけど、おそらく「日本人にしては上手」ということかな。ま、いいか。
その2)キャラウェイガーデンのバーでギネスビールを注文したらIDカードを見せろと言われたこと。これには周囲もびっくりというか大笑い。今回は比較的カジュアルな格好で参加していたのがこんな結果になったみたい。東洋人は若く見えるんだなあ。

それにしても、改めてツアーコンダクターを尊敬する。自分以外の人間を連れて海外に出ることがこんなに大変だとは思わなかった。昔は幼い助手を連れて渡航していたから、大丈夫だと思ってたけど、意外に大変だった。これが全員英語が話せたり海外に慣れているのであれば別であろうが、英語はあまり話せず聞き取れず、海外には1回か2回、それもハワイあたりというのであれば、仕方のないことだろう。何事もなく無事に日本に全員帰ること。それだけが今回の一番の心配事であった。あー、どっと疲れが出ました。

Saturday, October 21, 2006

アメリカがん研究会参加のため、大学研修医の仲間3人とデトロイト経由でアトランタ入り。
さっそくFちゃん、集合時間に1時間遅刻。さらに、デトロイトでの入国審査でFちゃんだけ入国目的の追求にあう。
続く税関でMちゃんのスーツケースだけ別室で開封検査。そしてそのスーツケースだけがアトランタでバッゲージクレームで出てこない。次の便に乗せられたらしいので、空港で食事をして待つ。
明日は6時半にホテルを出てキャラウェイガーデンズへ。ナビつきレンタカーで頑張るぞー。

Tuesday, October 17, 2006

びょーきに近い仕事

外来数の減少は、寒い季節の始まりだと、獣医師は実感する。あの忙しかった夏はもう遠くへと去ってしまった。日の落ちる時間も早まる今日この頃、黄昏の中動物病院に来る人影も少ない。薄暗くなった通りとは反対に、待合室の蛍光灯だけがやけに明るく感じてしまう。
それなのに。
なぜか最近、新患の数が多いような気がする。この暇な季節に、なぜか新患。それも1日に2件も3件も。今日、そのなぞがひとつ解けた。P病院は先生が入院されたそうだ。それで、こちらに流れてくる患者さんがいるわけだ。そういえば、M動物病院も院長先生が入退院を繰り返しているという噂だ。確かに、大田区は動物病院がひしめきあっている。ちょっと歩けばとなりの動物病院にすぐ行けてしまうけれど、こんなにあちこちで獣医師が入院しているっていうのは・・・・。
獣医師に多いのは、離婚経験者とうつ病の発症らしい。特に獣医師同士の結婚は離婚率が高いというのは、日本だけに限らないらしい。理由は四六時中同じ空間にいるから、問題も多くなるのだとか。うつ病が多いのは、拘束時間が長いわりに社会的地位も収入も高くなく、せまい職場で自分を抑圧しがちになるから、という説もある。
それ以外にも、働きすぎで病気になった話も聞くし、急遽院長代理を募集している病院もある。そんな打診を受けたこともあった。
この暇な季節に新患大歓迎だが、入退院する先生方のことを他人とは思えない。若くはないんですからね。体が資本、体を大切に。

Sunday, October 15, 2006

Stop!勘違い

今週金曜日の朝、アメリカ獣医がん研究会の年次大会に参加するため、日本を出発する予定。しかし、もちろん、スーツケースはまだ空っぽ。最近同じ職場の R子ちゃんに貸し出してたくらいなのだ。そこまで前もって準備する私ではない。昨年は、「アメリカのがん研究会ってどんなだろう」と思い立ち「思い立った今行かなければ、先のことなんかわからない。」とばかり初めてのアメリカ行きだというのに、たった一人で行ってしまった。人間、勢いと度胸で何とかなるものである。(危険)
アジア発の米国腫瘍内科専門医となった後輩にそそのかされた、というのもあるが、アメリカと日本の違いを自分で見たかったのが一番の理由。昨年はとにかく、その違いにカルチャーショックのようなものを受けるのでいっぱいいっぱいであった。何が違うって、何もかもが違う。(ような気がする)今年はもう少し、突っ込んだ参加(?)をしようと考えていたところ、昨年私がアメリカに行ったというのを聞きつけた大学の仲間が「今年も行くのですか?」と聞いてきた。そして、最終的に私のほか3名がアメリカに行くことになった。旅は道連れ、だろうか?

しかし!!
みんな、絶対勘違いしている。4人の中では、一番年上だけど一番後から腫瘍科に入った私だし、一人も4人も一緒だとばかりに、ホテル・チケット・レンタカーの手配はしたけれど・・・・英語はそんなにしゃべれません!ていうか、しゃべれなくなりました!! ToT
そんなに私を頼っても、私だってアメリカ2度目なんですってば!英語もぺらぺらじゃないんですってば!海外で暮らした経験があるっていっても、タイとフィリピンなんですから、ぜんぜんちがーう!!
泣きべそかきたいところをぐっとこらえて、あれこれ旅程をたてたり地図をチェックしたり、飛行機の乗り継ぎを調べたり・・・。まー、仕方ないのかな。4人の中で度胸は一番あるから。
ところで、アメリカのチップって、いくらくらいなんだろう?チップを渡す係も当然私らしい。珍道中に終わらないことを祈る毎日です。

Wednesday, October 11, 2006

遅い夏休み

職場は現在、遅めの夏休みを順番にとっているので、毎週誰かいない。シフトによっては2週間くらい誰かと誰かが顔を合わせない。日によっては一人足りない状態で仕事をするので、大した外来数でなくても忙しいような気がする。
私もどこかで、湯治でもしたいです。

Sunday, October 08, 2006

実現男

今月22日は神奈川16区の衆議院補欠選挙が行われる。以前にも書いたけど、高校時代の同級生が国政に意欲を燃やしていて、毎朝どこかの駅や街頭に立っている。先週の月曜日は雨の中、交差点で行きかう車やバスに頭を下げたり手を振っていたりしていた。知らない人や関心のない人から見たら、ほんとーにどうでもよいことなのかもしれない。でも、頑張ってますよ、我が同級生「実現男」は。
ちなみに「実現男」のブログhttp://www.jitsugen.jp/index.htmlをのぞくと、実現しているのは政治家になろうという人間があまりしないようなことばかり。すでに新聞や週刊誌で取り上げられているので、ご存知の方もあるかもしれない。内容は結構しょーもないこともあったりするのだけど、しょっちゅうしょーもない小ネタを撒き散らしている私としては、親近感を感じる。最近の実現として「公共物の落書きを消す」とかはいいとして、「左折だけで水を汲む」とか「世界一臭い食べ物を完食する」とかは、いったいこれは誰が何のために実現するのだろう、というネタではないですか?^^;これを東大卒・元経産省官僚という経歴を持つ人がやっちゃうっていうのも、変な人と思われそうでこわいけど。

先週の週刊現代では「16区の刺客」として取り上げられていたらしい。ご興味のある方は、ぜひブログをご覧ください。ほんっとーに、しょーもないネタ満載です。でも、こういう「実現」、最近何かしましたか?

残りの日々

はっと気づけばカレンダーは10月。(しかもすでに1週間経過)毎日、なんだか忙しくてなんとなく疲れが取れなくて、そうこうしているうちに、もう年賀状印刷のパンフレットを街中で見かけるようになってしまった。年末とか、年度末とか、あっという間に訪れそうだ。

最近診察をしながら、ふと考える。長くても半年、早ければ数ヶ月で私はいなくなる。私がいなくても、臨床5年目のRこちゃんがいるから、たいがいのことは何とかなるだろう。問題は、やはり腫瘍関係だ。特に、抗がん剤治療が合わず大学で放射線治療をした猫の、今後の治療は私でも頭が痛い。そんな治療を任せるのは、任される方も困ってしまう。
開業のめどが立たない今なら、来年の4月以降もここに残るという選択肢もないわけではない。でも、ここにずっといたら、きっと開業できないような気がする。だから、計画も気持ちばかりだけど、周囲には今年中、遅くとも今年度じゅうにはやめますと宣言している。私が開業できないのは、貫く勇気と根性が足りないからだ。くじけないように、自分に逃げ道を残さないようにして、きっと後で困っちゃうのかも。

今年のカレンダーが残っているうちに、もう少し動かなくては。そして、私は前にしか進めません。ごめんなさい。