Tuesday, May 24, 2005

火曜日のスコール

何故か今日も大忙し、午前中はノンストップで突っ走ってしまった。しかも、何故か今日はウサギ、チンチラ(猫ではなくエキゾチックアニマル)が立て続けだ。日曜日の朝一で診察したルナちゃんは経過順調なので今日は注射なしで次回土曜日再診。よかったと思う間もなく、チンチラさんは食欲不振、もう1件のウサギさんも食欲不振だが、どうも経過を聞くと胃腸の問題ではなさそうだ。レントゲンを撮ってみると、下腹部になにやら怪しげな影、子宮の病気の可能性が高い。それも薬でたちうちできるものではなさそうで、手術が必要だろう。しかし、ちょっと食べないわ、という気持ちで連れてきたお姉さんにショックを与えるのには十分すぎたようで、手術をするかどうか決められず今日は帰宅となった。今日の朝食べなかっただけだが、すでに血液検査で体にストレスがかかっていることはわかっている。状態が悪化するのは犬猫よりも数倍早い。明日にでも連れてこなければあさってはここは休みだ。(急患対応のみ)できるだけ早く決心してもらうことを祈る。たまにだけど、私の次の診察日を待って来院する飼い主さんもいるが、3日後では絶対に遅いのだ。
それに引き換え、のんびりとスタートした午後は6時過ぎからの雨脚に、とうとう誰も来なくなった。それどころではない、病院のドアの隙間から大量に雨がふきこみ、あっという間に待合室の床が水浸しになった。これじゃ電車止まってしまうぞ、と思っていたら7時を回る頃には小雨になっていた。
その雨の勢いに、いつだったかバンコクで暮らしていたとき助手と2人でエンポリ(エンポリアムというデパート)に買い物に行って大スコールとなり、エンポリでは短時間の停電に見舞われ、ようやく雨がおさまり帰ろうかという時はタクシーもつかまらず、仕方なく用水路と化した道を歩いて帰ったことを思い出した。膝下まで汚い水に浸かって歩くのは気持ち悪かったが、それ以上にその日おろしたての新しいサンダルを履いていたのがものすごくショックだったと、そんなことを思い出してしまった。もう雨季ですか?

日常

日常を取り戻す、という表現に違和感を感じる。それは一般論ではなく、もちろん自分自身を振り返ってなのだけれど、何が日常なのか、日常を失っているのかどうか、まずそこからよくわからない。自分の日常とは何か?
先週ちょっとへこむ事があって思考も滞りがちである。そのせいか考えもまとまらず、日常とは何か、なんてことで立ち止まってしまっている。今日の私は日常を取り戻しているのだろうか。
ツカレタカラ、オフロニハイッテ ネテシマオウ。

Sunday, May 22, 2005

午前一番に予約してもらったウサギの診療に間に合うように、朝8時に家を出る。ゴールデンウィークと違って東名高速は上下線とも順調な流れのようだ。今日の東京地方、空気がかすんでいる。東名高速の川崎のあたりからいつもなら見える新宿のビル群がかすんで見えない。
ウサギの診察は食欲がどうか、何をどれくらい食べたか、いつもの量に比べて何割くらいか、便の量はいつもの何割か、便の粒の大きさや色はどんなものか、いたってまじめに聴取を進める。食欲は昨日3割と言っていたのが今日は6割となっているし便の粒の大きさも少し大きくなったので、昨日の治療効果はまずまずであろう。しかし、油断は禁物、6割の食欲なんてまた悪くなってしまうかもしれないのだ。そこで今日は強制給餌(きょうせいきゅうじ)の仕方を伝授する。昨日1袋出した流動食用粉末(このウサギのサイズで2~3日分;3900円)と同じものを少量水でどろどろにして、プラスチックの注射器の先を切り落としたものにつめていく。それをウサギの前歯と奥歯(ちょっと言い方が獣医学的ではないけど)の間から口にさしこみ、少量ずつ舌にのせては食べさせていくのだ。これが家庭でできるのとできないのとでは、今後の回復具合が違う。ウサギはたくさんの食物繊維をとることで腸内細菌バランスをとっている。これがくずれると腸内にガスがたまったりいろんな問題がおきてくる。ウサギの胃腸はとっても薄い。犬猫の胃が薄手のデニムだとすると、ウサギは2枚重ねのシルクシフォンくらいだろうか?(余計わかりにくいかも)だから、ガスがたまったりして極端に大きくなると、それだけでもうだめなのだ。このウサギさんはカルテの記載から1週間前からの食欲不振があり、昨日私がとったレントゲンでは胃の中に毛球(もうきゅう)と少量の食べ物、そして腸がガスで大きく膨れていた。時間的な余裕はあまりない。
今日は2人獣医師が出勤していた。私がのこのこウサギ1件だけのために勝手に無給で休日出勤してまで自分で診察する、というのはよく考えれば「君たちには任せられない」という態度にも受け取れるので、感じ悪いなあと思うのだが、でも実際任せるのが不安だったのが正直なところだ。2人の名誉のために加えておくけれども、2人とも勉強熱心な若い獣医師だから、犬猫ならば指示だけ出して任せたと思う。でも、ウサギはちょっとしたことが犬猫以上に命取りになってしまうこともあるので、知識や経験がない人に任せるのは、自分が治療を放棄したようで嫌なのだ。お2人には失礼なことをしているようで申し訳ないけれど、自分自身のベストを尽くさないわけにはいかない。だてに10年以上獣医をしているわけではない。先週37歳になってしまったけれど、その分知識と経験を得てもいるはずだ。私には私にしかできないこともあるし、ただのアルバイト獣医師に成り下がりたくない。私が仕事をしているのはお金のためだけではないから。先生たちを信頼しない、やなヤツかもしれないけど、でもここでできない人に任せてしまったらお前はもっとやなヤツだと、自分の中から声がする。フクザツな気持ちで帰途につく。

本当なら今日は午前中に運転免許証の更新に行って、午後は歯医者さんに行こうと思っていた。上の奥歯が左右とも詰め物がとれてしまい、噛む事もままならないばかりか時々痛んでつらいのだ。しかし、ウサギの診療で予定が変わっただけでなく、午後は大学に行って資料を集めなければならなくなった。途中友人に届け物をしようと思ったけど、忙しそうで都合があわず、東名高速往復して今度は大学に急ぐ。
途中港北インターでお茶を飲んで休憩していたら、となりのベンチに腰掛けていた40代後半から50代くらいのご夫婦に話しかけられた。「あのバイク、そうですか?」と。日本では4月から高速道路でもバイクの二人乗り走行が解禁となった。(一部区間を除く)東名高速でもけっこう二人乗りのバイクをみかけるが、意外と若い人よりも中年以降のカップルが多い。はたから見ていると、仲むつまじくて微笑ましい。昔々、私の両親がまだ若い夫婦だった頃、休日にバイクに二人乗りして買い物に行っていたことを思い出す。
私は自分が乗りたくなってしまって二輪免許を取ってしまったから、自分で運転するほうがずっと楽しいのでそういう状況はおそらくないだろうけれど、近頃はやりのビッグスクーター二人乗りでおでかけする中高齢夫婦は、それはそれでちょっとうらやましくも見える。何がって、後ろに乗るしおらしさが、ですけど。少しの間会話を交わした後、お2人はご主人の駆るハーレーダビッドソンの3拍子のリズムとともに去っていった。
今日はそして、もうひとつおまけ。大学病院の資料室で古いカルテを見ていたら、見つけてしまったのだ。8年前の、宙太という名の猫のカルテ。6歳ですでに慢性腎不全となり、大学病院で腎臓移植を受けた宙太。退院の朝の採血で、抑えられるのを嫌がり暴れて、せっかくうまくくっついた新しい腎臓がちぎれて死んでしまった宙太の、カルテ。自分が研修医になったときから、カルテを見るチャンスがあるかとは思っていた。何が書いてあるのだろう。今では内部の人間となった私だ。見ることに問題はないはずだ。
でも、見るんじゃなかった、という気分にすらなった。何がそこに書かれていたかは、内部の人間だから詳しくは書けないけれど、ショックというかがっかりした。でも、きっちりコピーしてきた。それがあるからといって、何をするわけでもない。ただ、写真も少ない宙太の生きてきた最後の数十日と最期がそこにあるから、持ってこずにはいられなかった。それを見たからといって気持ちが晴れたわけではなく、むしろ沈む一方である。自分の心の中で静かに溜まっていたものが、水の流れで乱れてしまったようでもある。たまたま来ていた同期のイワサキにことの経緯を話し、軽く流してもらって気持ちを静めた。宙太のことが自分の中で一区切りを迎えるのも、あと少しかもしれない。獣医の私でさえ、死を受け入れるのにこんなに苦労しているとは、自分自身驚く出来事であった。

Saturday, May 21, 2005

大田区は動物病院の激戦区だ。私が仕事をしている病院の周囲、半径およそ3kmには、この3年間だけで6,7件の病院が開業している。そういうわけで年々狂犬病予防接種の届出代行数も減少、それ以外の来院件数も減少しても不思議はない。
しかし、今日の忙しさといったら、午前中だけで20件も診療をしている。2時間半の間に獣医師2人で20件というのが多いか少ないか。平均15分で1件ということになるが、診療が15分で終わるということはめったにない。もっと早いかもっと長いかだ。血液検査が必要になるようなものは飼い主の話を聞いて採血から検査終了までおよそ20分、その説明をするのに5分はかかる。そこに病気の説明や今後の治療について話し始めると30分などあっという間なのだ。時間がかかると言われようと、そう簡単に済ませるわけにはいかない。血液検査の結果からついた診断を治療に結びつけるのは、一見簡単そうで難しい。その重要さを理解してもらえなければお金のかかる治療としか、思ってもらえないことも実際少なくないからだ。人間だったらお医者さんの言うことはみんな聞くのにね。このへんを飼い主に納得してもらい治療に移行できる、というのが知識や技術に並ぶ獣医師のひとつの能力だ。
とにかく話を聞きだすこと。そこに診断のヒントが隠されているし、治療に移行できない障害の解決の糸口がある。入院させたくないから、腫瘍の手術は受けさせたくないと言われても、手術を受けなかったらどうなるか、入院を最短にさせるにはどうするか、ひとつひとつ例をあげたりしながら話を組み立て説明をしていく。やっぱり15分どころではない。
飼い主さんを待たせてしまう時間も長くなるけれど、きちんと説明することは私たちのポリシーとして崩せない。そんなわけで2時間半しゃべりっぱなし、この季節でものど飴が手放せないし、せっかくいれたお茶が冷めても我慢して喉を潤す。

今日はウサギさんが2件来た。獣医師は獣医師法によりほとんどの動物を診療してもよいことになっているが、大学で学ぶのは牛馬豚山羊と犬猫に関する基本的な病気だけで、ウサギやらハムスターに関しては自ら学ばなければならない。犬猫に関してだって、学生時代に習ったことはほんのわずかだ。私の知る年配の先生は、そういう教育体制だから、日本にはヤブ獣医が多いと言ってはばからない。
私は以前勤めていた病院で同僚だった同じ年のエキゾチック動物専門の先生からいろいろ学んだ。彼女がやること、話すことを頭に叩き込み、本を読み、わからないことを彼女に聞いた。ウサギやフェレットからの採血も彼女がやることを真似して覚えた。ウサギは犬猫とは随分違う動物だし、何より恐怖に耐え切れず自ら呼吸を止めてしまうほどデリケートだ。じたばた暴れて自分自身の足腰の強さがあだとなり腰を痛めて歩けなくなってしまう。小学校で飼育されているのが不思議なくらい、実は繊細でか弱い動物なのである。そんなわけで、ウサギさんのときはいつも以上に慎重に診療を行う。
何がまずいって言ったら、病院に行ったら病院に行く前よりも悪い状態になることだ。だから、具合悪くて病院に行ったのに、病院での扱いが悪くて立てなくなったなんてことは絶対にあってはならない。
気を使い、時間をかけ、慎重に慎重に。かくして、やっぱり診療は時間がかかるのである。

明日は今日診察した具合の悪いウサギさんの治療のために朝一番で職場に行こう。それから、大学に行って学会発表の準備をしなくちゃ。休めないな、やっぱり。

Friday, May 20, 2005

なぜか元気な肺腫瘍

何日か前に書き込もうとしていたら、あと少しと言うところで何故か画面が真っ白に。それでくじけてしまったので何日も更新されないままとなってしまった。ちょっとだけ、反省。書き込む気持ちはあるけどね。
昨日の腫瘍科には大田区の職場の本院(鶴見区)からの紹介症例がきた。フラットコーテッドレトリバーで、肺腫瘍だ。しかしもともと病院に行ったのは「歩き方がおかしい」ということだった。元気もないということであちこちレントゲンを撮ってみたら肺腫瘍が見つかり、大学病院へときたのだった。
肺腫瘍で歩き方がおかしい、というのは肺腫瘍に関連した肥大性骨症という症状かもしれないしそれ以外の理由かもしれない。結局最終的に20枚近くレントゲンを撮影し、来週の手術日にはMRIを撮影することになった。
肺腫瘍の症状はほとんど出ていないが後ろ足にまったく力が入らず、よく調べてみると前足にも異常がある。現在の生活の質を悪化させているのは腫瘍よりも起立不能だが、今後の生命の質をおびやかすのは明らかに肺腫瘍である。そこのところは大変重要だ。見えている症状よりも見えていないもののほうが、危険度が高い、ということ。そこを理解してもらえないと腫瘍の治療はうまくいかない。
今年度2回目の肺腫瘍。なかなか緊張するものである。

Tuesday, May 10, 2005

お引越し

桜の花が散った後、競うように花が咲き乱れる4月から緑濃くなる5月にかけてが季節の中で一番好きだ。武蔵新田の駅から病院へと向かう道沿いに建つ住宅の、壁に沿って伸びるジャスミンが満開を過ぎて今にも朽ちんとするのにも関わらず、周囲に方向を撒き散らしている。(人によってはトイレの匂いというけど)
ジャスミンの甘い香りは、バンコクの記憶だ。街のあちこちであの匂いがする。それに混じる食べ物の匂いと排気ガスの匂い。確か、1番暑い4月から雨季にかけて大好きなライチが出回り、マンゴーは最も味が濃くなる。ソイ24やソイ39には果物売りのトラックがいて、時々袋いっぱい買うのが楽しかった。枝についたままのライチを何キロも買って、家に帰ってから枝からもぎ取って洗ってそのまま冷凍庫に入れてしまう。食べるときに取り出して、指がしびれるのをこらえて皮をむく。自分の生涯であれだけ思い切り新鮮なライチを手に入れ食べる機会は、もうないだろう。今となってはバンコクが恋しい。(別に食べ物のためだけでなく。)
こんな思いにとらわれるのは、ムーさんがバンコクを離れる日が近づいているからだろう。ムーさんといえば、バンコク在住の飼い主にはその名を知られた愛犬家の知恵袋のような方である。そんでもって、タイ語に堪能であちこちからペットショーなどの情報を仕入れたり、病院の情報をのせたり、とにかくバンコクで犬を飼う人は必見のサイトの管理人である。そしてそのサイトがきっかけで私のバンコクでの活動が始まったのであった。バンコクで知り合った飼い主の方の多くは、ムーさんやムーさんの紹介で知り合った方々からのご紹介がほとんどだったし、私が帰国してから私のホームページを見た方の多くは、ムーさんのホームページからリンクして、だろう。
そのムーさんとJRT兄弟犬が、今月末EUのとある国へと大移動する。ソイ24のシーフードレストランの駐車場でのパピークラスも、ソイ55のスターバックスでお茶したのも、懐かしい。いろいろありがとうございました。本当にお世話になりました。一緒に過ごした時間はいつも楽しかったです。
道中のご無事を祈ります。いい獣医さん見つけてください。遊びに行ったら紹介してくださいね。
そして、ムー大陸EU編を楽しみにしています。お体に気をつけて、といつも祈るジャスミンでした。

今日のは日記というより、雑記というかんじだな。^^;

Sunday, May 08, 2005

洗車して気づいたこと

ゴールデンウィークも最終日、特にいつもと変わりのない日曜日であるが、午後から実家に向かい実家の前でバイクの洗車をしてみた。バイクの洗車、と書くとなんだか鼻歌交じりの日曜日の風景のように聞えるが、そう簡単なことではない。おっかなびっくり、とりあえずできる範囲、わかる範囲できれいにしてみただけの話である。バイクに詳しい人が聞いたら、笑ってしまうだろうことは予想に難くない。しかし、何をしてよいのか何をしてはいけないのか、バイク乗りには常識と言われることでさえ、私にはわからない。だってしょうがないじゃん、誰だって最初は初心者さ。唇かみしめバケツを手にとりかかる私。
実は私の父は昔々、12年位前まではオートバイを所有していた。だからわからないことは父に聞けばよいのだが、今の父は全く興味もないし、危ないといって触ろうともしない。もとはと言えば父と一緒にツーリングに行くことを夢見てこっそり教習所に通い始めたのだ。免許を取ったら驚かそうと思っていたのに、二輪免許が取れる直前、父は10年間所有していたオートバイを処分(確か売却)し、それ以後オートバイには寄らず触らずの生活をしている。誰もあてにならないので、とりあえずいろんな人から聞いたことを実行してみることにした。
まず水洗い。ザバーっと水をかけても大丈夫らしい。ほんとかな、ほんとかな。びくびくしながら水をかける。わが愛するバリオス(神話の中の神馬に由来する名前)は水浸しだ。次に、中性洗剤を使って汚れを優しく落としていく。洗濯用洗剤できれいになるよ、と言ったのは誰だったかな。バケツに中性洗剤(ウールもシルクも洗える中性洗剤)をいれ、洗い始める。シートもタンクもきれい、キレイ。でもエンジンまわりやチェーンまわりは洗剤をつけるのが怖くて洗えない。タイヤのホイールもごしごし、ナンバープレートもごしごし。これ以上はこわいから、やめておこう、また水で洗剤をよーく流す。
目の細かいあたりのやわらかいタオルで水をふき取る。傷をつけないようにこすらずそっとタオルを押し当てるように水気を吸い取らせる。これは誰に言われたわけでもないけれど、女性雑誌の美容特集で紹介されていた、洗顔後のタオルの使い方だ。
次に、銀色に光る部分を磨きにかかる。表面に細かい錆がついてソバカスみたいになっている。丹念に丹念に、少しずつ磨いていく。ここって磨いていいのかなあ、わからないからやめておこう。
最後にワックスをかける。これも、自分の中で大丈夫と判断されたことしかやらない。ひょっとしたらやっちゃいけないことを、やってしまった可能性もあるのだが、それを判断する基準を私は持ち合わせていない。壊れなければよしとしよう。うん。
だいたい、バイク用品店に行って本当に困ってしまったのだ。バイクをキレイにするためのものが本当にいろんな種類がありすぎて何がなんだかわからないし、同じ目的でもいろんな会社からいろいろ出ているので、何がいいのかわからない。店員さんの言うことも半分以上わからない。なんだか忙しそうで、あれこれ聞くのは悪いな。しょうがないから、とりあえずこれにしてみようかな。女性化粧品フルセット使って肌の手入れをしろと言われた男性の気持ちってこんな感じ?いや、そんな機会は普通ないから誰にもわからないかも、この心もとない気持ち。
かくして無事?に終わったバイクの洗車。
ここまで書いて気づいたこと。初めて動物を飼う人が、周囲からあれこれ言われてたくさんの本を読んで、かえって不安になっちゃったりいけないことしちゃったりする。今日の私はそれと変わらない。相手が生き物ではないけれど、何をどうしたらよいのかってことは同じだ。
動物のオーナーの水先案内人よろしく、正しい情報へと優しく導くのが、獣医師の使命でもあるんだな。ぴかぴかのバリオスをなでなでしながら、気持ちを新たにする私でした。

Thursday, May 05, 2005

動物病院のG.W

今年のゴールデンウィークは長い人で11連休がとれるという、盆暮れをしのぐ大型連休である。それがどうした、私が勤務する2つの動物病院はどちらも連休中に休みはない。そのうえ私は祝日も有給も関係ない、アルバイト獣医師である。
思えば、大学卒業以来5つの病院に勤務した経験を持つが、そのどれもが祝日も診療をしていた。どこの動物病院もそういうわけではないのに、不思議なものである。
1年中暑いバンコクとは違い、東京あたりではこれくらいの時期からフィラリアの予防を始めるし狂犬病の予防注射の来院件数も多い。日本では狂犬病予防法があるので四月になると役所から狂犬病予防注射のハガキが届き、近所の公園や公民館での集合注射に行くか、かかりつけの病院でうってもらうかということになる。健康な犬を何度も動物病院に連れて行くのはオーナーにとっても手間がかかるため、たいていが狂犬病とフィラリアを一緒に、ということになる。そんなわけで、ちょうどゴールデンウィークというのは動物病院へ行く、絶好の時期となってしまうのだ。
普段動物病院に来ない犬が、動物病院に来るとどうなるか。注射と採血で2回も針を見る。飼い主にしてもなれない動物病院で緊張するのか、言葉少なくなってしまう。診察室はしんと静まり、犬は突然不安になり吠えたり診察台から逃げようとしたり、次第にパニックの様相を帯びてくる。頼りの飼い主は押し黙るか犬を叱るかで、さらに犬が不安になってくる。人間が血を見る前に、手早く済ませなくてはならない。しかし相手は年に1度、来るか来ないかの動物だから念入りに問診をしなければならない。犬の吠える声と叱責する飼い主の声に負けじと問診を続ける、こちらも結構必死である。先日はフィラリア予防の前の血液検査に来た犬から採血をしようとした新卒獣医師が、飛び上がった犬に唇をかまれて3箇所穴があいたと後日報告を受けた。唇の傷からボタボタと血がしたたり落ちてなかなか止まらなかったそうだ。仕事がら咬まれたり引っかかれたりは覚悟のうえだが、この時期は特にそういう怪我が出やすい。
普段から病院に通っている犬は、血液検査や診察も多いので病気のサインは見つけやすい。しかし年に1回来るか来ないかの犬では、病気は見逃されていることが多い。水を飲む量やおしっこの回数や量が増えていたり、食欲がものすごくあるのに体重がすごく減っていたり。それらを飼い主は「最近暑くて水をたくさん飲む」「年を取ってきたから太らなくなった」というふうに結論付けていたりする。そのうえ、皮膚にできた腫瘍も何ヶ月もほったらかしなので、表面から血が出ていたり大きくなりすぎて皮膚からぶら下がっていたりする。狂犬病予防注射で動物病院に来るときまで温存されていた腫瘍というのも恐ろしいものである。結局そんな場合は予防注射どころではない。腫瘍が肺にまで転移して余命数ヶ月という犬に狂犬病予防接種をうつことはできない。見た目が元気であっても、体は確実に蝕まれているのだから、受付に狂犬病予防注射の猶予書を書いてもらい保健所に提出だ。
かくして、ただでさえ普段より来院件数に加え重症症例も少なくないので、診療に時間がかかるのは言うまでもない。ついでに言うと、金曜日は獣医師が私と新卒の獣医師なので、おのずと高齢の犬や重症なものは私の出番となり、午前3時間、午後3時間、しゃべりっぱなしである。カラカラの喉を冷めたお茶で潤す私に「先生、売れっ子だからー」とスタッフがからかいながら、容赦なくカルテを重ねていく。

ちょっとフィラリアの話。バンコクでは年間を通して予防をしているフィラリアであるが、日本では気温によって予防する期間と予防を休む期間とにわかれている。今年はようやく日本でもレボリューションが発売となったが、まだあまり一般的でないのか、問い合わせすらない。猫のフィラリア予防がまだ浸透していないせいもあるのだろうが、もったいない。今までのフロントラインと同様に使うだけでノミとお腹の虫とフィラリアの予防ができてしまうのだ。お出かけの機会の多い?猫ちゃんにはうってつけだと思う。
ところで、最近ノバルティスという薬品会社から「フィラリアは年間を通じて予防すべき」というレポートが出たらしい。まだ詳細が手に入らないのでコメントも難しいが、フィラリア予防は時代によって少しずつ変わってくる。治療もまたしかり。
首都圏の若い獣医師の中には、フィラリアに感染している犬を診た事がないという人が多い。それだけ都会周辺での予防率があがりフィラリア感染率が低くなったということなのだが、そういう若い人たちが自分の故郷に帰って開業しようとすると、ちょっと大変だ。見たことのないフィラリアの予防方法は知っていても治療をしたことがないから。私にしたって、フィラリアのつり出しという首の血管から心臓の近くまで細長い鉗子をいれて虫をつかんで取ってくる手術を見たことはない。私が獣医師になって2年目くらいにフィラリア駆除薬の安全性の高いものが出たので、フィラリアの駆除といえばまず注射なのだ。おまけに予防率の高さゆえ感染した犬にお目にかかることなどめったにない。しかし、地方ではまだまだ外科手術の必要な重症症例も少なくないので、地方で開業するならばその技術が必要となる。しかし東京周辺ではそんな手術など必要ないので見ることができない。彼らはどこかでその技術を習得しなければならないし、感染した犬の状態を勉強する必要があるのだ。
なんてことを考えていたら茨城で開業した友人が、大忙しのゴールデンウィーク中にその手術をしなければならず、時間がなくて夜中にやったとメールが来た。誰か田舎で開業するという後輩には、その病院を紹介しようとこっそり思う私である。