Monday, May 22, 2006

犬と猫

犬と猫、どちらが好きか、と問われてもどちらもそれぞれ魅力があるので、優劣をつけることはできないと思っている。強いて言えば、猫のほうが手はかからないので一緒に生活するのは楽だ。しかし犬のように一緒にでかけて一緒の時間を楽しむということができない。犬には犬の、猫には猫の魅力があるので、どちらが好きという意地悪な質問はぜひしないでいただきたいところである。
先週、新人獣医師に「犬と猫、どちらのほうがストレスに弱いと思いますか?」と聞かれた。犬はお留守番のストレスやら花火の大音響やらに弱くて、パニックを起こしたり下痢を起こしたりすることはよくあるが、猫は意外とそういう問題は多くない。しかし猫にとっての一番のストレスとは「自分のスペースを侵害されること」なのだそうだ。すると、犬のようにお留守番をすることとか遠くの花火の打ち上げなんかたいした問題ではなく、むしろ、自分のスペースが十分に確保されていないと調子を崩してしまう。だから多頭飼育の場合、トイレはそれぞれに用意するのが理想的で、飼育頭数に見合った部屋の広さが要求される。
だから、「犬と猫、それぞれストレスの原因が違うから一概にいえないし個体差もあると思う」と答えておいた。なんとなく漠然としたような答えかもしれないが、犬や猫にも多様性があるということはぜひ今から知っておいてほしいものである。

そんなほうっておいて欲しい猫も、意外と寂しがりやが多く、病院で預かったり入院したりする猫の中には、撫でてもらわないと食事をとろうとしないものもいたりする。ケージの片隅でじっとうずくまっている猫をそっと撫でてやるとだんだん前に出てきてすりよってくる。そのとき、目の前にご飯の器を持っていくと、食べ始めることがあるのだ。そうしてないと食べてくれないから、しばらく付き合ってやると、やがて満足そうに目を細めてさらに擦り寄ってくる。猫って、「あたしのことなんか放っといてよ」という顔をしながら、実は微妙な距離で誰かを必要としてたりする。これだから、犬も猫も、離れられなくなるのだろうな。

Monday, May 15, 2006

Happy Birthday To Me !!


今日は私の38歳の誕生日である。着々と年を重ねて楽しい毎日、と言いたいところだが5月病だろうか、なんとなく気分がへこみがちな今日この頃。
と思っていたら、今日愛川町のDANJIが私のために昼休みに不二家でケーキを買ってきてくれた。ロウソクは5本と当たり障りのない数?をつけてきた。そういえば、ホールのケーキも久しぶりだ。

さて、毎年順調に年を重ねる私の毎年恒例にしていること、それは「この1年間、何をしたか」である。なんと後ろ向きなのだろう?昨年の誕生日は試験に落ちたことを引きずっていたのであまりよいことが思い出せなかったが、今年は認定医試験合格したし腫瘍科ドリームチーム(ボスの愛娘マルチーズの手術)に入ったりしたし、ちょっとは成長の見られる年だったといえるかな。初めてアメリカにも行った。旅は道連れがいたほうがよいね。いくつかの悲しいお別れもあったしへこむ出来事ももちろんあった。他人から見たら大したことでなくても、いろいろあるね。
来年の誕生日は、大借金を背負っても、ぜひ自分の病院でささやかに迎えたいものである。今年の私もグレートでハッピーなのだ!!

Wednesday, May 10, 2006

ハチちゃん その2

お花とボンビアン(注:武蔵新田で美味しいと評判のケーキ屋さん)のシュークリームを持ってハチちゃんに会ってきた。
リビングに横たわったハチちゃんの枕元にはお花やお菓子などが供えられていたけれど、それがなかったら静かにお昼寝をしているかのような、綺麗な顔をしていた。ハチちゃんの腫瘍は奥歯の上のほうなので、進行すれば顔の変形が起きたかもしれないのに、不思議なくらい、男前なハチちゃんのままだった。冷静を装っていたのだけれど、思わず涙がこぼれてしまった。
「どうして死んじゃったのかしらって、思うくらいなんですよね。」とお母さんが言っていた。前の日の夕方まで何一つ変わらない日常だった。食欲も、お散歩も、いつもと同じだったし、死が忍び寄っているとは思えないくらい、元気で毛艶もよく、思いもかけない出来事だったのだ。
ハチちゃんの枕元に供えられていたのは、マーガリンを塗った食パン、カップに半分くらいの牛乳、ジャンボシュークリーム、カステラ、りんご・・・どれも、私が初めてハチちゃんに会った日に診察室でメモに書きとめ、健康のために控えましょうね、といったものばかりだった。ハチちゃんは、私が指示したとおりにそれらのものを口にしないように自ら食事の時間にはベランダに出るようになったのだという。
ハチちゃんに会いに行く前に、住所の確認をしようとして広げたカルテを見てちょっと驚いた。ハチちゃんと初めて会ったのは、2004年の5月8日だった。きっかり2年たった5月8日にハチちゃんは天に召されたのだ。それは偶然かもしれないけど、何かの縁とかそういうものだったのかもしれない。
がんに克つことはできなかったけれど、ハチちゃんとの時間は楽しかった。ハチちゃんは最初は病院嫌いで診察室でも逃げ出すことばかり考えていたみたいだけど、この数ヶ月間は病院でも大学でも、私のそばから逃げ出そうともせず、血液検査もレントゲンも点滴も、本当にお利口さんだった。点滴の針をはずすときだって、私一人でテープを巻くところまでできた。私の顔のすぐ近くにハチくんの顔があって、なんだかハックみたいだなあ、と思った。
天国で、思い切り走って好きなだけ美味しいものを食べて、そして、虹の架け橋の近くで私を見かけたら、顔を見せてね。

Monday, May 08, 2006

さよなら、ハチちゃん

ハチちゃんが亡くなった。昨日の夜までお散歩に行き、ご飯も食べていたのだが夜中に急変し、今日お昼前に亡くなったと電話をいただいた。明日は抗ガン剤を投与する予定でもあった。残された時間を考え、副作用よりも腫瘍抑制を第一に考え、できるだけ残された時間を長くする作戦を練っていたところだった。ガン細胞は私にその時間すら与えず、一瞬でハチちゃんを連れ去ってしまった。
今後のこと、つまりハチちゃんの体をどうするか、という話は、午後にでももう一度電話をください、と伝えた。お別れの時間や、冷静さを取り戻す時間を、少しでも家族に作ってあげたかった。
半年前のハチちゃんの誕生日には、ハチちゃんの姿をかたどったデコレーションケーキを病院にいただいた。飾られたプレートには「幸せをありがとう ハチ」とメッセージが書かれていた。ほんの、半年前だ。今日は愛川町にいて、伺うことが出来ない。明日、お花を持ってご挨拶に行こうと思う。

自分の診ている動物が亡くなるのは、やっぱりこたえる。いつかは死んでいくものだとわかっていても、つらい。死ぬことがつらいのではなく、その不在の悲しみがつらい。
さらに、そんな時でも泣くことができなくてつらい。次の瞬間には他の犬の問診を取り、考え処置を施さなくてはいけない。泣きたくてもへこんでても、平常心を装わなくてはいけない。自分の事だけでなく、ほかの症例もちらりと考え、スタッフに指示を出したり薬の量を計算したり、いつもどおり動かなくてはいけない。
やっぱりショック。こんなに治療が追いつかない腫瘍が、よりによってハチちゃんにだもの。
私が初めて会った頃のハチちゃんは今よりも体重が1.3倍あって、食事の内容を聞いたら本当においしそうで、グルメのハチちゃんで、でもそれでは健康によくないですよと、食事の内容をかえてもらい8ヶ月で10㎏もの減量に成功した。そうしたら、お散歩の足取りがすごく軽くなって、お友達に「ハチちゃん若返ったね」と言われると、お母さんが嬉しそうに話をしてくれた。じゃあ今度は歯石を取りましょうといって歯が真っ白になったら「新庄さん」と呼んでいるといっていた。歯石を取るのに麻酔をかけたら、のどの奥に腫瘤が見つかって、びっくりして大学で手術をしたらそれは良性で、定期的に血液検査や尿検査をして、ものすごく数値もよくて、体の中まで若返ったみたいと、私もお母さんも喜んでいた矢先、今年のお正月もあけたばかりのときに、顔が腫れたみたいと受診してその悪性腫瘍は見つかった。
全力を尽くして、大学の診療に予約を入れ次の週には、日本一の獣医腫瘍外科医に手術をしてもらい日本の獣医診療設備ではまだ3ヶ所にしか導入されていない放射線装置で放射線まであててもらった。傷が癒えたら次は抗ガン剤、本当に出来る限りのことはすべてやった。それでも、ハチちゃんは、旅だっていってしまった。ごめん、ハチちゃん。あんまり役に立てなかったかも。明日、ベルピで会おうねって約束してたのに、1日早いよ。

心残りは、旅立つ前にハチちゃんにおいしいものを食べさせてあげられなかったこと。昨日までふつうにご飯を食べていた、ということは「ひびせんせいのご飯」とお母さんいうところの処方食しか食べてないはずだ。私と出会ってから、健康のために減量を指示されて、大好きだったジャンボシュークリームもずっとお預けだった。おいしいものは、全部お預けになってしまった。ごめんね、ハチちゃん。明日、お花と一緒に届けるね。すまん・・・。

Monday, May 01, 2006

ブラックモンブラン

今日は暑い。つい先日まで肌寒くて春物の上着の下に薄手のセーターを着たりしていたのに、今日の愛川町の最高気温は29度まであがるという。Tシャツの上に革ジャンを羽織ってバイクに乗っていると、朝のうちでも気温の高さが感じられた。G.Wはこうでなくっちゃね。ま、私は仕事ですが。
あまりの暑さに、昼休みに銀行に行っていたスタッフがアイスバーを買ってきた。感謝、ありがと。
みんなでガリガリかじっていたら、福岡出身のDANJIが「ブラックモンブラン」という話を出してきた。ところが、誰もわからない。一生懸命説明するDANJIだが、誰も想像つかない。話の途中からネットで調べてみたら、なんと27000件余りのヒットがあった。そんなに愛されている「ブラックモンブラン」は九州限定(山口くらいまで?)のアイスバーで、バニラアイス(おそらくアイスクリームではなくラクトアイスかアイスミルクであろう)のまわりにチョコレートとクランチがまぶしてある40年の歴史のあるアイスバーであることが判明。
「東京のサミットストアで買える」とか「竹下製菓から取り寄せができる」といった話をネットで拾い上げていたら、DANJIはさっそく電話をかけて取り寄せることにしていた。その最小単位30本!懐かしくて食べたいんだそうだ。
私が子供の頃に食べていたアイスって、何だったかなー。あんまり記憶がない。小学生の頃は、母が夏はコーヒーゼリーかアイスクリームを作るのにはまっていたので、アイスクリームを買いに行くことがなかったのかもしれない。久しぶりに食べたいな、母の作ったコーヒー味のアイスクリーム。

初座長依頼

7月に開催される日本獣医がん研究会、総合教育講演の座長依頼が届いた。教育講演は全部で8科目、その中の治療学総論の座長依頼である。座長は大会の参加登録費が免除されるのだが、すでに事務局としてアルバイトをすることになるため、これはあまりメリットではないけど。
これをめんどくさい仕事が舞い込んだと思う人もいるかもしれないが、なかなかこういうチャンスはないものなので、正直ちょっと嬉しい。 たかが教育講演ではあるが、自分がそういう場で座長をするなどとは、数年前なら夢にも思わなかった話である。何事も経験。
嬉しいな、だから、当日までに頑張ってあと3kg痩せよう。